AIに補給を任せたら失敗し、AIに記録を任せたら荷物が減りました ~四国半周5日間の生成AI活用~
2026年5月28日から6月1日まで、自転車で四国を半周してきました。5日間で481.60km、登った高さの合計は3,712mです。
このロングライドには、走ること以外に二つの目的がありました。ひとつは、体のこと——何をどれだけ食べるか、痛みをどうするか——の判断を生成AIに任せてみること。もうひとつは、ノートパソコンを置いていって、記録をスマホ1台だけで取ってみることです。
結果を先に言うと、判断を任せたほうは目的を果たし、同時に大きく外しました。記録を任せたほうは、すんなり成功しました。そして外したところのほうが、ずっと多くのことを教えてくれました。
この記事でわかること
- 生成AIに体調や補給の判断を任せると、何ができて、どこで外れるのか
- 音声入力だけで5日分の記録を取ると、何が起きるのか
- AIの誤りには2つの型があり、それぞれ対処法が違うこと
2026年5月、四国を半周しました
四国一周は3回目の挑戦です。ただし今回は9日で一周する計画を立て、その前半5日分です。香川の坂出をスタートして、高知の窪川まで。本当はもう少し先まで行くつもりでしたが、台風が近づいていて、列車が止まると帰れなくなるので早めに切り上げています。
今回はわざと反時計回りにしました。島を一周するときは時計回りが定石です。海を左に見て走ると、左から出てくる車が減って走りやすい。それをあえて崩してみたのは、もう2回同じ向きで走っているので、逆に回れば違う景色が見えるかもしれないと思ったからです。
| 区間 | 距離 | 獲得標高 | 走行時間 | |
|---|---|---|---|---|
| 1日目 | 坂出→壬生川 | 101.48 km | 568 m | 4時間36分 |
| 2日目 | 壬生川→大洲 | 121.14 km | 588 m | 5時間38分 |
| 3日目 | 大洲→宿毛 | 107.52 km | 1,019 m | 5時間29分 |
| 4日目 | 宿毛→黒潮町 | 114.79 km | 1,021 m | 5時間39分 |
| 5日目 | 黒潮町→窪川 | 36.67 km | 516 m | 2時間02分 |
| 合計 | 481.60 km | 3,712 m | 23時間24分 |
この数字が、あとで効いてきます。

実験その1:補給も、痛みも、睡眠も、毎晩AIに相談した
これまでの四国一周では、決まって3日目に潰れていました。全身が筋肉痛で、まともに走れませんでした。食事が悪いのか、走り方が悪いのか、原因が自分ではわからないまま終わっていたのです。
今回はそこを何とかしたかった。だから出発前に走り方についても相談しましたし、道中も毎晩、宿に着いたらその日の走行記録のスクリーンショットと、スーパーで買ってきた食事の写真をClaudeに送りました。あとは「カロリー収支を考えて、晩ご飯に何を食べるべきか提案してください」と聞くだけです。

これが、想像していたよりずっと役に立ちました。
2日目の50km地点で、固形物がまったく入らなくなったことがあります。腹が張って、胃が痛い。三ツ矢サイダーを無理やり流し込んで走っていました。その状態を正直に伝えたら、「無理に食べなくていい、液体だけ続けてください」と方針をその場で切り替えてくれました。固形物を押し込むのは避けろ、ペースを落として胃腸を休ませろ、と。残り70kmを走り切れたのは、この判断変更があったからだと思います。
内ももがサドルと擦れて痛くなったときもそうでした。オロナインでいいかと聞いたら、それは殺菌が目的なので摩擦には向かない、と明確に否定されました。代わりに勧められたのが不織布のサージカルテープです。ドラッグストアで迷って、候補を2つ撮影して送ったら、布テープより不織布のほうが通気性で優れると比較までしてくれます。

それから睡眠です。長時間の有酸素運動のあとは交感神経が優位のままで眠りが浅くなる、という話を受けて、トリプトファンを含む牛乳を寝る前に飲むよう勧められました。半信半疑で続けたのですが、5日目の朝のメモに私はこう書いています——「よく寝た感じがする。牛乳の効果だろか?」。助言と結果が線でつながった、唯一の例でした。
こういう相談は、これまでできませんでした。夜のスーパーの棚の前で栄養士に電話するわけにもいきませんし、テープ売り場で薬剤師をつかまえて二択を判定してもらうわけにもいきません。24時間つながっている相談相手が手元にある、というのは、率直に言ってこれまでなかった環境です。
そして結果として、5日間を走り切りました。3日目に潰れなかったのは、今回が初めてです。
ここまでは、うまくいった話です。
ところが、完走してから気づきました
5日間、Claudeは毎日欠かさず、こう言い続けていました。
カロリーが不足しています。もっと食べてください

私は言われるままに食べました。日によっては1,500〜2,500kcalの不足と告げられています。 2日目の夜など、腹がパンパンで胃が痛くなり、それでもまだ「400〜600kcal足りない」と言われています。
完走した日に、ふと気になって「脂肪燃焼分を考慮して再整理してください」と聞き直しました。返ってきた答えで、目が覚めました。
私の走行時の平均心拍は130台から140台です。この強度だと、使っているエネルギーのおよそ半分は体脂肪から供給されています。つまり、アプリが表示する消費カロリーをそのまま食事で埋める必要は、まったくありません。再集計すると、5日間すべての日で、実際には摂取が足りていたのです。
毎日「足りない」と言われ続けていた5日間、実態はずっと逆でした。
原因もはっきりしています。私はAIに「消費カロリーと摂取カロリーの差を計算して」としか伝えていなかった。脂肪燃焼という前提を渡していなかったのです。
ここで思い出したことがあります。3日目の夜、食べる量のしんどさに耐えかねて「43歳という点を踏まえて再評価してほしい」と伝えたことがありました。そのときAIの回答は明らかに変わり、「不足分を全部食べて補う必要はありません」という方向に振れています。前提を一つ足しただけで、答えが変わった。あのとき気づくべきでした。
私は講座で「AIはあなたの鏡です」とよく言います。返ってくる答えの質は、こちらの問いの質で決まる、という意味です。その話を人にしておきながら、自分の体で5日間かけて実演してしまったわけです。
実験その2:ノートパソコンを置いて、スマホ1台で走った
もうひとつの実験の話をします。
これまでのロングライドでは、記録を書くためにモバイルノートを持っていっていました。IIYAMAの14型で、約1kg。充電器も合わせると、重さも体積もそれなりです。3,712m登る旅で1kgというのは、無視できる数字ではありません。
今回はこれを置いていきました。代わりに使ったのが、スマホの音声入力です。Typelessという、AIで補完しながら文字起こしをするアプリを使いました。

やり方は単純です。宿に着いて、風呂に入って、その日にあったことを思い出しながら話す。文字になったものを、その場で自分で直す。それだけ。走りながらではなく、一日分をまとめて吐き出す形です。
結果は上々でした。キーボードで打つより速い。電池も足りましたし、オフラインで困ることもありませんでした。何より、1kgの機材を積まずに済みました。これは次回以降も続けます。
技術(AI)の効果が「賢くなった」ではなく「荷物が1kg減った」という形で返ってくる。個人的には、これが今回いちばん腑に落ちた成果でした。
それでも、誤変換が4つ残っていました
ここからが本題です。
この記事の元になったメモを読み返していて、誤変換が4つ見つかりました。並べてみます。
| 出てきた文字 | 正しくは |
|---|---|
| 肘川 | 肱川 |
| 野村温泉 | 湯ノ浦温泉 |
| 伊勢方面 | 伊予方面 |
| 国立科学博物館 | 愛媛県総合科学博物館 |

大事なのは、私は間違いに気づけばその場で修正していたということです。話しっぱなしの出力ではありません。目で追って、おかしいところを直して、その上でこれが残りました。
誤字脱字なら目が止まります。しかしこれらは、日本語として破綻していません。「肘川」も「野村温泉」も、文章としてはすらすら読めてしまう。さらに厄介なのは、書いた本人には頭の中に正しい景色があることです。画面の文字ではなく、自分の記憶のほうを読んでしまう。
もうひとつ気づいたことがあります。上の4件、実は性質が違います。「肘川」「野村温泉」「伊勢方面」は音が近く、素直な変換ミスです。ところが「国立科学博物館」は、元の「愛媛県総合科学博物館」と音がかなり違う。変換ミスでは説明がつきません。AIの補完が「科学博物館」という語からもっともらしい候補を埋めた可能性がありますが、確かめる術はありません。
ちなみに、固有名詞はAIがいちばん外すところだという話は、私が講座でずっとしていることです。自分の名前を複数のAIに尋ねさせて、正答と誤答と「情報なし」を見比べてもらう実演を何度もやってきました。その私が、自分の原稿で4件やられていたわけです。
誤りには、2つの型がありました
ここまで挙げた失敗を、「いつ気づいたか」で並べ直してみます。
| 誤り | 気づいたのは |
|---|---|
| 食事の写真からのカロリー推定 | その場。何度も訂正した |
| カロリー収支の前提(脂肪燃焼) | 5日後。完走してから |
| 完走後にAIが出した総括表の数字 | 4か月後。この記事を書くとき |
| 音声入力の誤変換4件 | 4か月後。同じく |
3番目について書いておきます。完走を報告したとき、Claudeは5日間の走行データを表にまとめてくれました。その表では、5日目の距離が「約60km」、獲得標高は「不明」。合計は「約504km」「約3,200m」でした。実際は5日目は36.67kmで516m登っており、合計は481.60kmと3,712mです。検算すると、距離は推定した60kmを合計に足しているのに、獲得標高は5日目を足し忘れている。同じ表の中で扱いが揃っていません。

ただしこれは、AIだけの落ち度ではありません。私が5日目のデータを渡していなかったのです。完走した、としか伝えていません。渡さなかった空白を、AIがもっともらしく埋めてよこしました。
さて、並べてみて気づいたのですが、この4つは2つの型に分かれます。
ひとつ目の型は、照合する材料が手元になかったものです。
脂肪燃焼の割合が、これにあたります。私はその数字を検証する手段を持っていませんでした。だから言われるまま信じました。疑う手がかりがそもそもなかったのです。これは注意深さの問題ではありません。前提を先に渡していなかったことが、すべての原因です。
ふたつ目の型は、材料はあったのに、流し読みしたものです。
総括表の数字と、誤変換の4件はこちらです。5日目が「約60km」と書いてあるのは読めば気づけましたし、「国立科学博物館」も自分が行った場所ですから、立ち止まれば違うとわかります。ただ、そこを重要だと思っていませんでした。完走を祝ってもらっている文章の中の表を、いちいち検算はしません。読み飛ばしたか、そもそも見ていなかったかのどちらかです。
そして正直に言えば、ふたつ目の型は、AIの問題ではありません。自分で書いた文章でも、同じことは起きます。誤字が残ったまま印刷に出してしまうのと、構造は変わりません。
ただ、ひとつだけ違うところがあります。AIの出力は量が多く、しかも整っている。整った文章は、流し読みを誘うのです。手書きのメモなら引っかかる粗さが、そこにはありません。
では、どうするか
型が違えば、対処も違います。
ひとつ目の型——材料がないもの——は、前提を渡すことでしか防げません。
年齢、体重、目的が完走であってタイムではないこと、走行強度。今回でいえば、これを最初に伝えておけば、5日間の警告は出なかったはずです。仕事に置き換えれば、自分がその場にいなかった会議の要約や、自分が持っていない数字がこれにあたります。判断の根拠を自分で確かめられない領域は、あらかじめ条件を渡すか、元資料に当たるしかありません。
ふたつ目の型——流し読み——は、時間と目を変えることで減らせます。
出てきた直後にその場で読むのが、いちばん見落とします。一晩置いてから読み直す。あるいは、別の人に読んでもらう。念入りにやるなら、書かせたのとは違うモデルに校正させるのも手でしょう。同じモデルだと同じ癖で読んでしまう可能性があるからです。
実際、この記事に書いた誤変換4件を見つけたのは、私ではありませんでした。記事の構成を相談するために、別のAIにメモを読ませたときに出てきたのです。人が一度確認して素通りしたものを、目的の違う読み手が拾った。今のところ、私が知っているいちばん確実な方法がこれです。
それでも、完全にはなくならないと思います。だからこれは、対策というより「残った課題」として抱えておくのが正直なところです。
次に走るときと、持ち帰ったもの
後半の4日はまだ走っていません。次に窪川から再開するとき、スマホ1台という装備は続けます。ノートパソコンは置いていきます。
補給については、最初から前提を渡すつもりです。同じ道具でも、聞き方が変われば別の答えが返ってくることは、もう体でわかりました。
そのうえで、いちばん大きかったのは3日目に潰れなかったことです。2回やってできなかったことが、今回はできた。AIに相談しながら走ったことが効いたのは間違いありません。外したところばかり書いてきましたが、成果のほうも事実です。
AIを使うというのは、道具の操作を覚えることではないようです。自分の状況を、どれだけ正確に言葉にできるか。四国の国道を走りながら、それを考えていました。これは、私が子どもたちに言語化の力をつけてもらおうとしていることと、たぶん同じ話です。
礼賛でも拒絶でもなく、使って、外して、どこで外れたかを調べる。その繰り返ししかないのだろうと思っています。

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